大判例

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千葉地方裁判所 昭和38年(レ)42号 判決

○当事者

控訴人

千葉県農業共済組合連合会

右代表者理事

足立信義

右訴訟代理人弁護士

花井芳雄

被控訴人

関本栄一

ほか八名

○主   文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

○事   実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人らは控訴人に対しそれぞれ別紙債権目録記載の金員およびこれに対する同目録記載の各損害金起算日から支払ずみに至るまで金一〇〇円につき一日金三銭の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、被控訴人江沢喜平治は控訴棄却の判決を求めた。その余の被控訴人らは適式の呼出をうけながら当審における本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面をも提出しない。(以下省略)

○理   由

一、まず、職権をもつて本件訴の適否について判断する。

(一) 農業災害補償法によれば、農業共済組合は、農業者が不慮の事故に因つて受けることのある損失を補填して農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的として、農作物共済、蚕繭共済、家畜共済などの事業を行う法人であつて(同法第一条、第三条、第八三条)、設立には認可を要し(同法第二四条)、また設立が都道府県知事から命令される場合があること(同法第二九条)、組合は一定の区域を定めて設立され、組合が成立するとその区域内に住所を有する者で、水稲、麦等の耕作または養蚕の業務を営むもの、または牛、馬等の家畜を所有しまたは管理するものは当然組合員となり、また成立後に加入資格をもつに至つた者は、そのとき当然加入となるところのいわゆる強制加入方式をとつていること(同法第一五条、第一六条)、農作物共済および蚕繭共済については、右の資格者が組合員となつたときは、命令の定めるところにより定数で特別の定めをした場合を除き、当然にその者と組合との間に共済関係が成立し(同法第一〇四条)、また家畜共済については、ある場合には組合員が家畜共済に付することを義務づけられ、またある場合には組合員から家畜共済の申込を受けたときは、特段の定めのある場合を除いては組合はその承諾を拒んではならないこととされていること(同法第一一一条、同条の三)、農作物共済もしくは蚕繭共済にかかる共済損金または組合員に賦課した賦課金を滞納する者があり、正規の督促ののち、なお完納しないときは、組合は、市町村に対し地方税の滞納処分の例により徴収することを請求することができ、市町村が一定期間内にその処分に着手せず、またはこれを終了しないときは、都道府県知事の認可を受けて地方税の滞納処分の例により自らこれを処分する権能を与えられていること(同法第八六条、第八七条、同条の二)、解散が行政庁の認可を効力発生要件としている(同法第四六条)ほか、行政庁の積極的な監督下におかれていること(同法第一四二条の二ないし七)などが認められるから、農業共済組合は、法律で定められた公共の目的のために設立されたものであつて、加入強制で解散の自由がなく、ある範囲において国家的公権を与えられているものであり、いわゆる公共組合として、公法人たる性格を有するものというべきである。

(二) つぎに、組合員は定款等の定めるところにより定額の共済掛金を組合に支払わなければならないことになつているが(同法第八六条)、農作物共済、蚕繭共済、家畜共済にあつては共済掛金率は法定されており(同法第一〇七条、第一一五条)、前記の組合強制加入および強制共済関係成立の点からみて、組合員の右共済掛金支払義務は単なる保険料の支払義務の性質にとどまらず、公法上の金銭給付義務と解すべきである。さればこそ、農業共済組合には、農作物もしくは蚕繭共済にかかる共済掛金を滞納する者がある場合は、前記のような行政上の強制徴収の方法によることが認められているのである。

また、組合のきよ出金の徴収についても農業共済基金法第四六条第三項において農業災害補償法第八七条の二第一項から第六項までを準用し、前同様の強制徴収の方法が与えられている。このことからも明らかなように、組合に対する組合員のきよ出金支払義務も公法上の金銭給付義務と解すべきである。

(三)  ところで、公法人に属する公法上の権利は、公法人が公の目的のために有しているものであるから、専属的なものであつて譲渡性を有せず、第三者がその財産上の利益のためにこれを差押えまたは代位行使することは許されないものと解するのが相当である。そうだとすると、本件のように農業共済組合連合会たる控訴人がその構成組合員たる農業共済組合に代位する場合であつても、公法人たる同組合に代位してその組合員である被控訴人らに対し公法上の権利たる前記の農作物共済掛金、家畜共済掛金およびきよ出金の各支払を訴求することは許されないといわなければならない。

二、よつて、控訴人の本件訴は不適法として却下を免れず、これと同旨の原判決は結局正当であつて、本件控訴は理由がないから棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 堀部勇二 裁判官 岡村利男 裁判官 辻忠雄)

債 権 目 録(省略)

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